Berlinale 2014-総括 (下)

プラハでのOne World映画祭もあと水曜日まで。すでに10本以上は軽くみたので、はやいとこ今年のベルリン映画祭の総括をやっておきましょう。

ではベルリナーレ2014・総括二回目。ベルリナーレの第二週の週末は2月中旬にも関わらず天気がよかったこともあり、なかなか映画館で一日中になれず。それもあって今回は12本という本数に落ち着いた。プラハでのOne World映画祭もあと水曜日まで。すでに10本以上は軽くみたので、はやいとこ今年のベルリン映画祭の総括をやっておきましょう。

2月14日:
Zamatoví teroristi(Velvet Terrorists);
80年代のチェコスロバキアで当時の共産党政権にたいして、テロを企てたとして、「テロリスト」とされた人々たちのその後を追うドキュメンタリー。フィクションとの境が非常に淡いなのがよい。

ZAMATOVÍ TERORISTI from Peter Kerekes on Vimeo.

Jack Smith: Beyond the Rented World II – Hamlet, Gems & Other Shorts:
小生にはこの手の実験映画に関しての造詣はないので、ノーコメントでよろしく。

2月15日:
Through A Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence of a People
同名の写真論をもとに撮られた「アメリカの黒人」をテーマにした写真の出現とその発展を追うドキュメンタリー。カメラを通して映された黒人たちの肖像が、いかにアメリカ社会の進歩と発展のイコンとなり、またはそれと同時に黒人差別の表象となり、そして、その後20世紀にはいって公民権運動の時代においていかに写真が社会の変革へと関わっていたか、を追う。このジャンルを含めた写真史そのものに興味がある人は是非。

Und in der Mitte, da sind wir(And There We are, in the Middle):
オーバーエスタライヒの片田舎にあるエーベンゼーEbensee。ここであった第二次世界大戦中にあった強制収容所の記念式典を妨害したのは地元の高校生たち。その彼らの更生とこのオーストリアの片田舎での彼らの日常を同時に描いたドキュメンタリー映画。オーストリア社会でまだ色濃い歴史的な「犠牲者」という意識と90年代以降の右傾化という問題が下の世代にこそあるということをこの作品は語っているけれど、ともあれ、この映画をみてまず思ったのは、小生にとっての幸運は、そのようなど田舎に生をうけなかったことかもしれない、ということにつきる。こんな田舎に生まれればこの映画に登場する少年達のようにふるまう以外にすべがない、ということであれば、この世界は救いがなさすぎる。とはいえ、世界の99%はそのような倦怠に彩られているというのが、小生のテーゼであるが。
http://www.indermitte-derfilm.com/

2月16日:
Le beau danger
ルーマニア人作家のノルマン・マネアNorman Maneaを追ったドキュメンタリー作品。彼の詩作とその作家活動をおった作品。ところどころに挿入されるこの作品の監督であるレネ・フレルケRené Frölkeによる詩情をたたえたハンドカメラで捉えられたフィルムによるモノクロの映像、山野の光景とマネアの姿は、彼の詩作への彼なりの応答として読み取れる。マネアの作品の一部のみが延々とプロットとして流れる場面もあり、特に緊張と我慢が強いられるが、独特のスタイルをもった力作といえる。さもなくば、映画館の暗闇中ででの香しき眠りのひとときを提供してくれる作品か。もちろん、小生は監督の今後に期待。以下彼のステイトメント。

The film is a cinematic arrangment between documentary portrait
and literary text. Interwoven with the moving image and divided into one
hundred and seventy black and white text screens we read the work of the
Romanian author Norman Manea. It is the attempt to have image and text
question eachother and respond to eachother. Arising from the observation
of the present of the author, which is also our present, the inner conflict of
our time becomes visible, a conflict in which information becomes the
counterpart of experience and therefore also of the memory itself.

Miniature N°1 from René Frölke on Vimeo.

Miniature N°2 from René Frölke on Vimeo.

Miniature N°3 from René Frölke on Vimeo.

Neuland(Unknown Territory):
スイスはバーゼルにて難民申請者たちが、スイス社会へ出るための準備をするための学校とその日常がこの映画の舞台。
そういえば、ちょうどベルリナーレが始まる直前、スイスでは移民を制限するための国民投票が反対の多数で可決されるという事態になった。そのスイス社会の右傾化というテーマと関連しているが、今回プラハはOne Worldに出品されたスイス国民党の元党首だったボリス・ブロッハーを追ったドキュメンタリー映画Experience Blocherという作品もその点に詳しいが、むしろブロッハー個人のポートレートといってもいいが。この映画については、また後日。

Macondo
今年はコンペ出品作品は数えるほどしかみなかったけれど、その中でもなかなか最後にきた映画は良作といえるものだった。
映画の舞台はウィーンの郊外、難民申請者たちが多数居住する団地、通称「Macondo」が舞台。主人公は10代頭のチェチェンからやってきた難民申請中の男の子。その男の子の視線からみた母親のこと、そしてウィーン在住のチェチェン社会のこと、ロシアとの戦争でなくなったとされる父親のこと。ストーリーの中で、チェチェンを初めとしたコーカサスの至る所で今も尚見られる誘拐婚のエピソードがここそこに顔を出す。この誘拐婚については小生の畏友菊池由紀子氏による記事に詳しい。小生が真っ先に思い出したのはアルメニア人の写真家のディアナ・マルコシアンDiana Markosianによるそのチェチェンにて誘拐婚を追った写真作品「さよなら、私のチェチェン(Goodbye My Chechnya)」。その中で、主人公と母親と父親の関係が浮かびだされていく中で、オイディプスコンプレックスに取り憑かれたかのようなストーリー展開もみせるが、それでも、チェチェンにおけるウィーンの難民申請者のソサエティーと彼が住まうMacondoが、やはり、このドラマの中心に位置するだろう。

MACONDO (2014) Excerpt from Richard Lormand on Vimeo.

てな感じでした。

総じて、去年もそうだったが、ベルリナーレは年を追うごとにその自らの伝統でもある市民参加型の映画祭(パノラマ部門などは一般参加者が最優秀作品を選ぶ)という色がうすれていくような印象を持つ。映画関係者やマスコミ関係者のほうが、一般の参加者よりも目立つ傾向にある。

チケットも当日こともこれまで全く問題なかったにもかかわらず、ここ二年程は報道関係者や映画産業の関係者が優先される様になったと聞く。要するに一般参加者に割り当てられる枚数が少なくなったということは、小生がこれまでのベルリナーレでなかなか経験したがなかった「ソールドアウト」が頻繁におこっていたころからも推定される。

ベルリン映画祭も転換期か。それにしても、今年は積極的に見たいと思う劇映画が少なく、実際見た劇映画は2本にとどまった。

ベルリナーレとは別に大掛かりなドキュメンタリー映画祭をこの際立ち上げてもよいかもしれないが、すべてベルリンでやる必要もない。そうでなくても、ベルリンはいまや飽和状態、かつ、そんな余分な金をつぎ込む余裕もなかろう。ドイツでドキュメンタリー映画に特化しているのは、DocuLeipzigか。今年のそのころはまたベルリンゆえ、また赴く余裕もあろう。

ともあれ、ベルリナーレ自体が商業的になったようにうつるのは、映画そのもの、そして、本来の意義である知られざる良作の発掘という本来の意義が背景に転じて、より商業的映画や、そしてそれらのスポンサーのプレゼンスが増しているように見えたのと関係があることだろう。

実際、映画狂いの小生にとっては、そんなこともあって、なにか今年は不完全燃焼な感じが否めなかったベルリン映画祭であった。

とはいえ、このベルリナーレの開催期間中天気がよかったこともあって、なかなか映画館の暗闇へ、というモチベーションを保つのに苦労したともいえるが。

ところで、期間中なにを見逃したか、それも気になるところであるが。そうした作品は黙っていても映画館にくると信じよう。

さて、ぼちぼちプラハで開催中のOne Worldに話題を。ではまた自戒。