もうひとつのチェルシー。

少し前の映画になるのだけれど、今年のベルリン映画祭で、この4月に旅したウクライナのドネツクに関する「もうひとつのチェルシー」(„The other Chelsea“- 2010年)というドキュメンタリーをみた。この作品は東ウクライナはドンバス地域の主要都市であるドネツクに本拠地をおくシャフタール・ドネツクというウクライナを代表するサッカーチームとそれをめぐる地域の人々と日常をつぶさにユーモアも豊富に記録している。

なぜ「もうひとつのチェルシー」というタイトルがついているのか。

このシャフタール・ドネツクも2009年のUEFA杯を優勝するほどのウクライナを代表する強豪なのであるが、このチームも、このロンドンに本拠地をおくチェルシーがロシア人の大富豪ローマン・アブラモヴィッチによって買収されてから、彼のポケットマネーでビッククラブへと変身していったように、ドネツク地方を代表する大富豪リナト・アフメートフがこのクラブの代表になって以来、彼のポケットマネー(かどうかあやしいが)でウクライナでもディナモ・キエフと勢力を二分する強豪へと成長していった。その意味をこめてのタイトルなのだろうと推測できる。

この映画は2011年のドイツのドキュメンタリーの映画の賞であるFirst steps awardを受賞している。そんなこともあって、今年のベルリン映画祭の最終日にフォーラム部門で行われたスクリーニングを見る機会があったというわけだ。

監督のヤコブ・プロイスはベルリンの人で、もともとは法律家であるという異色の人だ。彼は選挙監視業務などでウクライナやロシア在住の経験もあって、それがこの映画の制作に生かされているようだ。

彼はそのベルリン映画祭でのスクリーニングの後のアフタートークではとにかく饒舌、でほぼ一時間映画製作とウクライナの現在に関してノンストップで喋り続けた程の人。彼のその饒舌さやユーモアぶりはこの作品にも如実に現れている。

彼のインタヴューも発見。映画の内容と絡めながら、最近の、現在収監中の元首相のティモシェンコに関わる出来事も含めたウクライナ情勢と政治についてもクリティカルに語っている。(英語)

もちろん、この映画は今回サッカーのヨーロッパ選手権のウクライナでの開催都市でもあるドネツクとその街があるドンバスという地域の現在もといウクライナという国自体を、しかも、フットボールを通して、知るにはもってこいの映画だし、この手の作品では、小生が知る限り類をみないのではないかと思う。いまのところ日本で公開されている様子はないけれど、もっと知られてもよい良質のドキュメンタリー映画であることは間違いない(ちなみにYoutube上で全編をみれるようだ)。

実際のところ、ウクライナがフットボールを通じて薔薇色の未来が約束されているかのようにうつるような現実をこの作品は語っているようにはみえるけれど、実際ベルリナーレのスクリーニングの後で監督のプロイス自体も語っていたのだが、それがいかに見かけだけのものであるのか、そして、実際のウクライナの現実がどれだけもろい土台と欺瞞の上に成り立っていることもこの作品を通しても見えて来る。

このLügenlernen上でも、実際、その現実が小生の目にもどううつったのかつぶさに報告したいと思っている。

小生も来月のユーロ開催にあわせてノイケルンでこの映画のスクリーニングをもくろんでおりますので、追ってまたお知らせします。

ではまた自戒。