首都のフットボール馬鹿ども。

昨日ブンデスリーガの一部と二部の昇格と降格をかけたプレーオフでフォルトゥナ・デュッセルドルフとヘルタ・ベルリンが対決したのだけれど、結末はなんともはやということになってしまった。

フォルトゥナは15年ぶりの昇格がかかっていただけに、ファンの熱狂ぶりは凄まじかった。なんせ、プレーオフ第一戦、ベルリンでのアウェイ戦を2−1で勝ってしまったうえ、後半90分をすぎて2−2で同点と言う展開。けれど、もし、ヘルタがもう一点取って2-3のスコアにされてしまったら、アウェイゴールルールでトータルで逆転、また来季も2部でという状況だっただけに、ファンの焦燥ぶりは言語に絶するものがあったのだろう。

一方でヘルタ・ベルリンは独逸という国の首都、もとい旧東ドイツ圏で、現在のところ唯一のブンデスリーガ一部所属クラブだ。一昨年ブンデスリーガ二部降格をしたものの、一年で一部復帰を果たした。けれど、今年も低迷。監督が今シーズン二回も変わる始末で、二月からはオットー・レーハーゲルが指揮をとっているが、それでも二部降格か一部残留をかけてのプレーオフ圏でシーズンを終えることとなった。

試合は、2−1とホームのフォルトゥナがリードした段階でヘルタ側のゴール裏から大量の爆竹と発煙筒をピッチに投げ込まれる事態に。ヘルタのファンブロックには独逸でも悪名高いフーリガン集団、そしてスキンヘッド集団(もちろん極右との関連もあるだろう)をかかえていることでも知られていて、そういった連中が昨日デュッセルドルフでも派手にやらかしてしまったようなのだ。その時点でスタジアムのピッチの側のヘルタファンの目前に警察が投入される始末。

フォルトゥナファンがここでエスカレート仕切ってしまった伏線はそもそもここにある。というのも、警官隊やスタジアムの警備員がヘルタ側のフーリガンの警備に集中して配備されてしまったために、そこで誰も遮るものがいなくなってしまったようで、90分を過ぎたあたりから昇格を待ちかねたファンたちがスタンドからピッチ脇へと試合終了の瞬間を待ちわびたかのようになだれ込みはじめてしまったからだ。そして、試合が、まだロスタイム7分のうち残り2分、ヘルタ側のゴールキックという時点で、試合終了を勘違いしたファンがピッチ上大量に流れ込む事態に。

もし、小生もその場にいたらピッチに共になだれ込んでしったかもしれない。あのサッカースタジアムの熱気はそれぐらい人を阿呆にさせるものがあったろう、ということぐらいはみてとれる。

試合は結局しばらくの中断の後、すわヘルタは再試合要求か、とそういう空気が流れかけた瞬間、選手と監督のレーハーゲルがピッチにもどってきて試合再開。けれど残り2分間特になにも起らず終了。と同時にあらためてフォルトゥナファンがピッチ上になだれ込む事態になった。ヘルタは一シーズンでまた二部へと逆戻りという、これでまた非常にありがたくないエレヴェータークラブの蔑称を得ることになってしまった。

しかし、ヨーロッパの首都でこれだけ首都のクラブがメチャクチャに魅力的でない、という国もないだろう。どこの国もすくなくとも一つは国を代表するようなクラブがあるというのに。

何といわれようとヘルタがこの街を代表するサッカークラブだとは認めないし値するとも思ってない、というベルリナーにこれまで多く出会ってきた。そもそもベルリンにサッカーの強豪が育たないのは、この街にお金がない、いいスポンサーがつかない、というのに理由を求めるのが、理にかなっているといえばいえるけれど、それ以上に東西分割の時間も長かったわけで、例えば東ベルリンの人が西ベルリンのクラブであるヘルタに愛着がもてない、というのはごく自然のことだ。クラブ・サッカーはなんだかんだいってローカリズムとそれへのパトリオティズムと結びついているし、特にベルリンのこと、各地区ごとに独自の文化や気風があるだけにそのあたりは一筋縄でいくわけがない。

へルタというベルリンを代表するはずのクラブが、いや、そうおもわれていないところにこのクラブといい、サッカーをめぐるこのベルリンという街の悲しさがある。ベルリン程の規模の街ならば、もう一つから二つぐらいのクラブがブンデスリーガの一部あるいは二部にいてもいいはず。実際現在ブンデスリーガ二部に属するウニオン・ベルリンという旧東ベルリンを代表するクラブがあるが、このクラブが一部に昇格するなんて、金輪際ありえないと思ってる人もかなりの数にのぼるだろう。

それをいうならば、東京だって、日本の場合だからサッカーに対する人気において比較の仕様がないかもしれないが、J1に所属するチームはFC東京一つだけである。J2にまで広げても東京ヴェルディと最近J2に上がったばかりの町田ゼルビアぐらいなのだから。だいたいこの三つのクラブの本拠地は東京「都下」である。もっとも千葉(柏、千葉)や埼玉(浦和、大宮)、神奈川(川崎、横浜FM、横浜FC、湘南)まで広げれば、もっと多くはなるけれど。

それに比べ、ロンドンにはどれぐらいプレミアリーグ所属のクラブがあるのだろうか。正直小生はよくわからない。そういえば、フランスはパリはパリ・サンジェルマンぐらいか、しかも、このクラブも低迷していて久しい。EUをリードする二国の首都のクラブはここのところ酸っぱい体験ばかりしている。

ところで先日まわったポーランドでも首都のワルシャワには一部にあたるエクストラクラッセに所属するチームは二つあって、国を代表する名門クラブのレギア・ワルシャワとポロニア・ワルシャワとある。一方ウクライナの首都キエフには一部であるプレミアリーグに所属するクラブはディナモ・キエフは言うに及ばずヨーロッパでも名門にカテゴライズされるべきクラブだが、他にもアーセナル・キエフ、そしてオボロンというチームもある。

今日の冒頭の写真は5月6日の今シーズンのポーランド・エクストラクラッセ最終節のワルシャワはペプシスタジアムで行われたレギア・ワルシャワのホームゲームのキックオフ直後の写真なのだが、もの凄い数の発煙筒や爆竹が投げ込まれて白い煙を放っているのが見える。

試合開始直後にこんな行動に及ぶファンなどかなり極端だとは思うが、今年度のポーランド・エクストラクラッセは上位大混戦で、この試合の一節前の時点で、レギアは首位をキープしていたものの、3ポイント内にポズナン、ホジュフ、ブロツワフが続く状態で、この4つのチームに優勝の可能性が残されていた。そしてその前節レギアはアウェイのレヒア・グダンスク戦に0−1で破れ、同時に競合三チームがポイントを重ねたため、試合後、レギアは一気に4位にまで順位をさげて、同時に自力優勝の可能性までもが消滅する事態になってしまった。

レギアはポーランドを代表する名門で、60年代から70年代にかけてヨーロッパの舞台でも活躍したチームだった。それが2005/6年度を最後に優勝からも、そして、優勝したチームのみに参加の権利が与えられるチャンピオンズリーグからも遠ざかっている。レギアのファンにとっては、最終節のホームの試合を残してのその低落に憤懣やるかたなかったようで、この試合開始直後のこの事態に発展してしまったわけだ。

小生もこの試合はレギア側のゴール裏で試合を見ていたのだけれど、ファンの過激ぶりに少々肝を冷やしてしまった。おまけに小生のほぼ足下でも発煙筒が暴発する始末。

けれど、周りのファンは(小生はすこしウルトラズの連中からは離れたところにいたのだけれど)冷静になにごともなかったように見ているし、スタジアム全体もこんなことは折り込み済みという反応で、しばらくの中断の後試合は普通に再開されていった。

それをみて日本のJリーグのファンはなんてお行儀がいいのだろう、と思うのだった。当地でサッカーがポピュラーになっていくのは喜ばしいけれど、こんなスポーツとは、ファンたることとは、関係のない馬鹿な振る舞いだけは真似をしてもらいたくないと切に望む。

それにしても、ヘルタもレギアもどちらも今年は酸っぱい目にあった首都のクラブだった。ファンが憤懣やるかたないのもわからなくはない。彼らの熱狂的なクラブへの信仰が今年も報われなかったのだから。それだけは分かる。

サッカーはそれにしても人を阿呆にさせる。これはどうしたってロゴスでもっても説明不可能なところがある。だからこそやめられない。そういつも思っている。

というわけで今日はこれにてお開き。また自戒。

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